会社は労働契約上の使用者として、労働者に対して、提供すべき労働力の質的向上のために研修への参加を命ずることができます。
その範囲も、現在の業務遂行に必要な技術などの習得に限らず、
より広い範囲で知識、技能などの向上を目的とする研修への参加を命じることができるとされます。
(静岡鉄道管理局事件=静岡地裁昭和48年6月29日判決・労働関係民事裁判例集24巻3号)
更に、会社には社員への安全配慮義務があり、労働契約や就業規則で「安全衛生教育の一環」として明記した上で、業務命令として実施する場合、一定の合理性があれば受講を求めることは可能と考えられます。
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もっとも、今回のAED講習について考えた場合、救急医療の現場における受講義務は「業務の内容や活動領域の性格から、一定の頻度で心停止者に対応することが期待・想定される非医療従事者」に課されるものとされています。
具体的には、施設の管理者やスポーツ施設または公共施設のスタッフ、警備員、教員などが該当します。例えば一般的なオフィスワークの事務員が、この「一定頻度者」に該当するとは言えません。
また、講習内容には胸骨圧迫など体力を要する実技も含まれるため、健康上の理由や宗教的・個人的信条などで受講を拒む場合は、個別に配慮が必要だったり、例外的な不参加を認めるべきケースもあるでしょう。
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このように、会社の業務内容によっても結論は変わりそうですが、
一般論として業務のために会社が指定する研修は業務命令に当たり、社員は原則として拒否できるものではありません。
ただし、受講を強制する場合は、事前に就業規則や安全衛生方針に明記し、社員への説明と理解を得ることが重要です。
拒否者や後ろ向きな意見がある場合は、強制ではなく「推奨」として、代替措置(座学のみ、資料配布のみ等)も検討すると良いでしょう。
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なお、一般的に業務命令で受講させられないとされる教育・研修としては以下のようなものが挙げられます。
①研修内容が職務あるいは職員の質の向上とはおよそ無関係ならばNG
例えば、思想信条の教育などがこれに当たります。
②研修内容や方法が過度の精神的・肉体的苦痛を伴う場合はNG
例えば、就業規則の書写を長時間命令するなどが当たります
③研修内容が法令に違反する場合はNG
例えば、性別による訓練内容の不当な差別などが当たります。
④海外留学や海外での研修命令は原則として社員本人の同意が必要です。
一方的な命令は権利濫用と判断される可能性が高いと考えられます。
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